世界のはじっこでの日常生活。思考生産物の物干し竿。


by miomio
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歌と踊りのないインド映画

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Lunch box 「めぐり逢わせのお弁当」

この80年代のアイドルの歌のタイトルみたいな邦題のセンスは
どうかと思うけれど映画はとてもいい。
え?ここで踊り入れるの?なドラマも歌も踊りもてんこ盛りの「インド映画」とは一線を画す
静かでゆるやかで暗いトーンで物語りは展開する。
胸をぐらぐらつかまれるようなことはないし、登場人物はみんな地味。
「平凡」な生活を粛々と生きている。
今もっていないものを手に入れるためにもがくことはなく
日常生活に不満はあるけれど、何かを変えようという方向に
エネルギーのベクトルは向いていない。
毎日、繰り返し生きていくだけで大変だからだ。
そんな中で、歯車がぽろっと狂い、会うことのない二人に接点が生まれる。
それから二人が関係を深めていく展開が味わい深い。
妻に先立たれ、生きることに大きな期待をしていない孤独な男と
家庭にいて、世間との接点のない孤独な女。

私が一番好きなのは「カフェ」の場面。
想い、期待、失望、恐れ、喜び、情熱、全方向の人間の感情がほとばしるのに
二人は出会わない。そして現実は私たちが期待しているようにはIt does not happen.
大人になると、現実なんて自分ひとりの気持ちで動かせない事情が出てくるのよね。
わかるようで、もどかしく、切なくて、ちくんとくる。

もしかしてな希望の光がちょっとだけ見えなくもない終わり方。
でも何にも起こんないかもしれないし、
二人が出会ったらどんな会話をするんだろうと
外野ながらやきもきする。

人の出会いが”手軽”で”お気楽”で脆い現代に生きていると
手作りのお弁当や手書きの手紙に象徴される「人とのつながり」が懐かしくなる。
すごい勢いで変わっていく現代インドの中で
取り残されていた二人がみていくこれからと、毎日届けられていくお弁当。

歌と踊りはありませんが、奥行きと広がりがある素敵な物語です。
ぜひ。
★★★★☆
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by miomiomiomion | 2015-01-05 07:24 | 映画評