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世界のはじっこでの日常生活。思考生産物の物干し竿。


by miomio
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知的栄養補給

マイキンドルの調子がおかしくなってから読書がまた“文庫本回帰”していて、
でしかもそれが「従来スタイルを貫く自分おしゃれ」的な全く見当違な言い訳をもって、
キンドルを修理するとか代償策を探すという努力を放棄していたんだけど、
先週UNHCRの同僚の家に遊びに行った際に
「スマホでも電子書籍が読める」ということを“発見”し、
さくさくと自分のギャラクシーにアプリを落としてみたんだが、

やばい、これ使える!

いやさ、いまさらだけど、私たち本当にいい時代に生きてるよね。
重い本をダンボールで持ち歩かなくたって(今だ3箱は私に追随している)
料理本だって、雑誌だって、日本の小説だって、
WIFIあれば手に入る時代なんだから。(当たり前だって言わないでおくんなまし。
そういう現状が存在していても自分の理解の範疇にすとんと入ってなくて
利用できてないことっていっぱいあるはずだから)
日本帰国時にBOOK OFFで悶え死にかけたが、ネットをもってして、
世界中の魅惑なコンテンツに実際買い物するより廉価な値段で手が届いてしまう時代って、
本当に昔(そんな昔でなくて、自分の学生時代(十分昔かw)
に比べてみても格段に恵まれている。

というわけで、知的栄養補給に勤しむべく、早速いろいろ落としてみる。
Synchronicity (Joseph Jaworski), 世界の経営学者は
いま何をかんがえているのか(入山章栄)人間の大地(サン・ディクペリ)、
孤独の歌声(天童荒太)、真珠婦人(菊池寛)、明暗(夏目漱石)、
人間失格(芥川龍之介)、堕落論(坂口安吾)、最初の4冊以外は
青空文庫出品(懐かしい・・・・)だからすべて無料という太っ腹である。

早速天童荒太を読んでみる。ううーん、彼、「永遠の仔」の時に
上下いっぺんに8時間かけて読んでしまったほどがーんときたんだが、
ちょっとこのた話先が読めるっつか、都会人の孤独と狂気にフォーカスしすぎて
ちょっと食傷気味。重いのも、おかしいのもいいんだけど、
その合間の「人間の良心」の部分が薄くて、ちょっと登場人物に感情移入できないまま
終わってしまった。都会人と狂気ってのが私の環境とかけ離れているから、
というのもある(皮肉に聞こえるかもしれないんだけど、
人間の狂気って中東なんてところにいたほうが身近にありそうなんだけど、
東京のそれに比べると宗教とか政治とかそういうまっとうな社会的ファクターとつながっていて、
先進国のわけのわからない魑魅魍魎の中、普通の仮面の下にどす黒く眠ってるってのと違って
思考が広がりやすいのよ)というわけで評価は★★☆☆☆。

次、坂口安吾の堕落論。しょっぱなの「元来日本人は最も憎悪心の少ない
または永続しない国民であり、昨日の敵は今日の友という楽天性が
実際の偽らざる心情であろう」・・・という文章にぐっとくる。
文章が決して難しくないんだけど、深遠っていうか、あとは漢語が結構あって、格調高い。
(でも辞書必要)読んでて頭がよくなる感じ(←錯覚?)
武士道が元来人間の弱点に対する防壁の意味があるという解釈と
人生や本能に対する洞察の結果であるという視点にハイライトを引く。
彼の文章は人間の弱さに真っ向に向かいながらとつとつと語っていて、
天皇制も武士道も歴史の必要性をもってして生まれたんだという説に深くうなずく。
こういう普段考えてもみないことを考えさせられる・自分の視点が広がるというのが
読書の醍醐味であることよ。★★★★☆

で、菊池寛の真珠夫人。テレビドラマになったのとたわしコロッケが話題になった
という知識(と言えないだろう)だけしかない状態で読み出したんだが、
ひやーこれは壮大な悪女のドラマですよ。
いろいろ時代が変わりつつある中で、新興成金と墜ち行く貴族階級の確執、
人間の情、怨念、弱さ、愛、美しい瑠璃子に共感できるのは10%で
あとは美しい女性に翻弄される男の愚かさにお気の毒度90%、
でも彼女も栄華を全て手にいれたようでいて本当に欲しかったものは
手に入っていないという皮肉。自殺、年の差結婚、許されない恋、セレブ生活、親殺し
年の変わらない継母と子、障がい者、3角関係とワイドショー的などろどろ要素が満載。
なんていうかおいしいところだけとってふわふわとろとろしている注目される女性像が
「小悪魔」「美魔女」みたいなライトでポップな現代に生きていると
こういう男を死においやっていく「妖婦」ってのがゾクゾクくるけど、
共感っていうんじゃなくて、怖いものみたさ。
「妖艶」っていう形容がつく凄みのある美しさをもった女性がいて成り立つ物語。

ただ、イエメンくんだりまできて日本の悪女の話を読んでる自分ってのに
ちょっとつっこみを入れたい。ってか結構ダウンロードしたラインアップが暗いな私。
★★★☆☆(3.5娯楽としてよくできてる)
ちなみにたわしコロッケのくだりは出てきません。
残念。(でてきても評価4にはしないけど)
読みたい本はいろいろあって、どれもキンドル化されているわけではないけれど、
これを機に一週間に一本のペースで読んでいこう。(←今のところ一日一冊ペース)
脳の筋力って普段読んでる文章量とその質にある程度比例すると思うの。
毎週エコノミスト読むこと(これは英語)と英語の本と日本語の本の割合を50・50にすること。
(日本語の本だと読む速度が10倍以上早いのでどうしても本が手に入る環境だと
日本語が多くなっちゃう)それからちゃんとアカデミックな論文を毎週読むことを自分に課す。


ということで、私の読書日記もほそぼそと再開の由

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by miomiomiomion | 2014-09-20 15:11 | みおの本棚